リフレーミング(reframing)してみよう

~「リフレーミング」は心理学の家族療法の技法で、これまでと異なる角度からのアプローチ、視点の変化、別の焦点化、解釈の変更という「フレーム」の架け替えによって、同じ「絵(状況)」でも違った見え方になり、自分や相手の生き方の健康度を上げていくことを言います。この能力は誰しも潜在的にもっていると考えられています。 これから私が書いていくことは、ジャンルを超えて多岐に渡ることになりますが、自分の潜在能力を使って、いま私たちの目の前にあること、起こっていることの真実に少しずつ近づいていけたらと思っています。

子どもの「摂食障害」が増えています~病気への理解を深めましょう

コロナ禍以降、世代を超えて増加傾向がみられます。命の危険もある病気です

摂食障害」とは

 忙しい日々を送っていると、食事の時間を大切にする習慣が少しずつ削られてしまうことがあります。規則正しい食事を楽しめている間は自分の変調に気づきやすいものですが、不規則になることで生活リズム自体が崩れ、変調に気づきにくくなります。自分の変調が、さらに食欲と食事そのものに現れるのが摂食障害です。

 

 ストレスや不安が高まったコロナ禍以降、ダイエットがきっかけに罹患しやすい若い女性だけでなく、小中学校の子どもたちの中にも摂食障害(特に「拒食症」神経性やせ症)が多くみられることに危機感を覚えます。学校内のスクールカウンセラーの相談も増え、病院への外来診療や入院者数も多くなっています。

 摂食障害は、日常の食行動に様々な形で問題が生じてくる病気です。

 体の不調が原因ではなく、ストレスなど様々な心理的な要因で起こります。食欲や食行動の異常だけでなく、自己評価が体重や自分の体型(ボディイメージ)に影響を与えて「自分の体重に過剰にこだわる」などの心理的要因が根底にあることが特徴です。

 摂食障害の患者数は全国で約22万人(2022年)が治療を受けていますが、治療への不安や恐怖から通院につながらないケースも多く、患者数は数倍とも推定されています。死亡率は約5%で、精神疾患の中では最も高率です。

  摂食障害になりやすい年齢や性別は、主体は思春期や青年期の女性ですが、コロナ禍以降は、小学生や幼児、結婚や出産後の女性も増えています。

主な症状

「拒食症(神経性やせ症)」過食症(神経性過食症)」「過食性障害」の3つがあります。

 

「拒食症(神経性やせ症)」は、ダイエットなどをきっかけに、体重の増加や体型の変化を恐れ、食事を取りたがらなくなります。体重減少のために健康を損ねることもあります。太ることへの恐怖感があり、既にかなり痩せていても痩せていると思えず、もっと痩せようとします。自分のボディイメージが歪んでいきます。標準体重の85%以下の状態が続いているとしたら、拒食症への注意が必要です。過覚醒で、食べていないのに行動は活発です。

過食症(神経性過食症)」は、食事のコントロールができなくなり、むちゃ食いをした後に激しい後悔に襲われ、喉に指を入れる等して嘔吐を繰り返します。手の甲に歯が当たって吐きダコができ、胃酸で歯を傷めることもあります。下剤や利尿剤を使って体重を減らそうとする場合もあります。「過食症」は排出行動を伴う「拒食症」の変形バージョンです。体重は平均体重の場合が多く、対人関係が辛くなるケースも多くみられます。

 

※「拒食症」「過食症」ともに、栄養が不十分なために、女性は生理がこない、むくみ、低体温などになります。進行すると、栄養失調から、腎不全や低血糖不整脈感染症といった重篤な合併症を起こすこともあります。

 

「過食性障害」は、食事のコントロールができず、食べることを止められない特徴が症状です。嘔吐、下剤の使用などの排出行動は伴わないので肥満症になり、健康に影響が出てきます。他人との会食を避け、過食後に気分が落ち込みます。

摂食障害の原因

 摂食障害を、「食事の食べ方の問題」と捉えると、病気の本質を見失います。拒食症の患者の場合、無理に食べさせるだけでは、かえって病態を悪化させます。

 摂食障害は、1つの原因によって発症するものではありません。社会・文化的要因や心理的要因、さらに生来の生物学的要因が重なる多因子疾患と考えられています。

 

 現代の日本では、「痩せ願望」を持っている10代~20代の若い女性が多く、ダイエットをきっかけに摂食障害を発症することが多くみられます。ダイエット以外でも、「受験の失敗」「成績の不振」など、生活の中で自信を失うような挫折体験や、頑張っても周囲の期待に応えられない、認めてもらえないなど、強いストレスを感じる状況に陥ったとき、摂食障害を発症することがあります。

 その他には、家庭の養育環境の問題(虐待を含む)、性的被害によるストレスなども契機となることがあります。

 根源的問題として、低い自己評価や対人関係の葛藤、社会の中での心理社会的な強いストレスが裏に潜んでいると考えられています。

 

摂食障害の治療

 「拒食症」の場合、命にかかわる合併症の可能性があるので、医療機関ではまず「低体重」への対応が最優先になります。カウンセリングや精神療法は次のステップで行われます。

 まず、患者との安定した治療関係と治療環境を整えていきます。拒食症になるメカニズムや、痩せていることを責められないことを理解してもらうことが大切です。また、食べることに対する不安や恐怖、悩みなどについて、本人が安心して本音を話せる治療関係を作っていきます。
  低体重に関しては、本人の希望にも配慮ながら、入院しなくてよい体重、学校や会社に行ける体重、旅行に出られる体重など、目標体重を段階的にしていくというようにスモールステップの行動療法がとられます。

 

  摂食障害薬物療法には特効薬はありません。それぞれの症状に適切な薬剤を使います。

 合併症については、低栄養状態(女性の場合は無月経)では、ホルモン治療を行います。骨のカルシウム量の減少で、成長期の低身長や骨粗しょう症になることもあります。

 

 「過食症で嘔吐がある場合は、胃酸によって歯の表面が溶ける酸蝕歯(さんしょくし)や、食道が傷ついて出血する逆流性食道炎などが起こります。それぞれの症状に合った治療や生活習慣指導を行います。 

 

 精神療法やカウンセリングは、ある程度体重が増え思考力も安定してくるころから開始します。

 体重が回復してくると、患者の深い所にあった思いの言語化もみられてきます。「学校が嫌だった」「進路が心配だった」「仕事でミスをして落ち込んだ」など症状が出ていた頃には気づかなかった自分の感情に焦点が当たるようになります。更に根源的な、人間関係の苦手さや完璧主義、自己肯定感の低さなどへの気づきが意識されることで、逆に今まで気づかなかった自分の長所を見つける認知行動療法などが効果的に機能していきます。

 

 「過食性障害」は、認知行動療法(保険適用)で生活と食事のモニタリングを行います。
 症状のモニタリングをする、生活食事記録表をつけるなどをします。食事の様子やそのときの気持ちを記録します。「嫌なことがあった」「心配事があってつい食べてしまった」など、気持ちと症状の相関関係を知ることで症状のコントロールにつながります。 

 症状を自分でコントロールできないという無力感から、少しコントロールできるようになると自信がつきます。それとともに、空腹感を強めないために、規則正しい食事の習慣をつけて血糖値を下げないようにします。

摂食障害の予防は、生活と食事から

 摂食障害のきっかけは、多くの場合、失敗や劣等感などの自己評価の問題が多くあります。また、社会の「痩せていると可愛い」「スリムなファッションは格好が良い」などの社会のトレンドの価値観と、自分の今の体型の認識の問題があります。家族や友人からの「足が太い」などの心無い一言や「着たい服が似合わない」などが劣等感になり、それまで持っていた学校生活や仕事上の不全感や失敗体験などと結びついて、さらに自己評価を下げて摂食障害に陥っていきます。

 人はストレスに対して耐性が弱くなると、抑うつ状態になったり、ひきこもったりしますが、摂食障害はその中の一つの現れです。

 

 不安の高まりやすいストレス社会を生き抜くためには、失敗を乗り越えられる、日頃からのストレスマネジメント(セルフモニタリングとコーピング)の積み重ねが大切です。また、家庭や学校、職場、地域社会でも、お互いに相手の気持ちへの想像力を働かせる必要があります。何の気なしの言動でも人を追いつめてしまうことがあるからです。

 特に子どもの場合は、それぞれの個性を持った子どもの存在を周りの大人が守り育てる配慮がなくてはいけません。

 実際に、小中学校で「摂食障害」の相談ケースが増加しているので、摂食障害に関連すると思われる、一般的な子どもの食事や生活での配慮事項を以下にまとめてみましたので参考にしてください。(もちろん大人にも共通している部分があるので当てはめてみてください)

 

摂食障害の予防として、子どもの食事や生活全般で親が気をつけたいこと

1、子育てでは、幼児期から中高生になるまで、親は日頃から子どもの食欲や食事の様子、体重の増減には気を配る習慣を持ちましょう。

 

2、ストレスや不安が高まりやすい現代社会を生きるためには、子どもには無条件で安心できる安全な居場所が必要です。時々、子どもの目線で家庭や学校での子どもの生活全般を見直してみましょう。

 

3、子どもの食事の時間が規則的で、楽しい時間であり、栄養バランスの良い食事が摂れているか。多少の好き嫌いや食べる量の問題があっても、いつもそのことで叱られる時間になっていないか。また食事の作法などで細かく注意されたり、緊張を強いられたりする時間になっていないか。親自身が子どもとの食事を楽しめているかなど、点検してみましょう。

 

4、日頃から子どもが失敗したことを強く叱ったり、親がそのことにがっかりしていつまでも言い続けたりしていないか。失敗した子どもを受け入れて、次に失敗しても親に言えるようにしてやっているか。振り返ってみてください。

 

5、子どもの体型や学校の成績について、ポツリとでも酷いダメ出しをしていませんか。もししてしまっていたなら、きちんと謝罪しておきましょう。

 

6、親から子どもをたくさん褒めていますか。頑張りを認めて、親バカをきちんとやっていきましょう。子どもの長所も短所もひっくるめて丸ごと子どもを理解し、ありのままを受け入れて、愛情を注ぎましょう。

 

7、子どもと過ごす時間が親として幸せを感じる時間になっていますか。このことは相互的なことで、お互い様なのです。大人も気持ちのゆとりが必要ですね。