あなたとわたしが見ている「世界」は同じでないかもしれない。
同じ空間にいて、同じ風景を見ていれば、同じことを感じるはずだ、と考えるのではないでしょうか。しかし実際はそうではありません。多くの人々が、ちょっと明るいなぁと感じる光でも、ある人にとっては「まぶしくて仕方がない」ということがあります。
私たちが見たり感じたりする「世界」は一様ではないのです。一人ひとりの「世界の感じ方」の違いを知ることこそが、発達障害を理解するための出発点です。知識を持つことで、発達障害のある人も、そうでない人も、それぞれが生きやすい社会について考えるきっかけになれば幸いです。(本書 はじめに 要約)
発達障害を生きる
NHKスペシャル取材班(2018)
「発達障害」に多くの人が関心を寄せ、解説書も多く出版されるようになっている反面、間違った認識や偏見も多く散見されるようになりました。15人に1人の割合で発達障害特性を持つ人たちがいると言われる社会で、自分を知り、他人を知って共存していくことが求められています。(明らかに発達特性があると思われる人たちが「発達障害」への偏見・差別をしている現実もみられます。)
本書は、発達障害の当事者の声に耳を傾け、専門家による知見や海外の事例を紹介して、反響を呼んだ生放送「NHKスペシャル 発達障害 ~解明される未知の世界~」をもとに書き下ろされ、私たちが知るべき事柄についてやさしく解説しています。
<目次>
はじめに
1 知られざる「感覚過敏」の世界
当事者中心のスタジオゲスト
発達障害の3分類とは?
光や水が苦手。当事者が語る「感覚過敏」
道で話すと相手の声は騒音にかき消される
スーパーマーケットの冷蔵棚がうるさい
発達障害の子を育てる
感覚過敏がコミュニケーションの問題を引き起こす
学校の教室がパチンコ店くらいの騒音に満ちている
感覚器でなく脳の情報処理が違う
シミュレータで自閉スペクトラム症の人の世界を体験
車道に向かって走っていってしまう理由
感覚過敏にやさしいスタジオセットにつくり直した
刺激を減らして買い物を楽にするクワイエット・アワー
コラム1 感覚の困りごと─軽減する具体策
どうしても忘れ物をしてしまう女の子
ADHDと主婦業は相性が悪い
「だらしない」と言わないで
教科書を音読できない男の子
文字が文字だと認識できない
読むための努力を重ねて
対応できると、自分を受け入れられる
コラム2 苦手なこととの向き合い方
3 二次障害のこわさ
発達障害が引き起こす、さらなる困難
どんな職場でも浮いてしまう
「普通」になりたい
発達障害「あるある」を共有する
「普通」が正しいわけではない
発達障害の当事者同士で集まることの意義
コラム3 「定型発達症候群」という考え方
4 発達障害を抱えながら働く
独特の個性を活かしてグローバル企業に就職
レゴを使って「快適エリア」をつくる
社交的でないと就職できないのは、仕組みがおかしい
発達障害の人の雇用がグローバル化や人材不足を乗り越える鍵になる
「適当に水をやって」が通じない
「ミスしたことを振り返る」は間違っている?
一緒に働いて人生が変わった
カミングアウト、する? しない?
特性を理解し、受け入れることから
コラム4 発達障害を「堂々と」生きる
おわりに