リフレーミング(reframing)してみよう

~「リフレーミング」は心理学の家族療法の技法で、これまでと異なる角度からのアプローチ、視点の変化、別の焦点化、解釈の変更という「フレーム」の架け替えによって、同じ「絵(状況)」でも違った見え方になり、自分や相手の生き方の健康度を上げていくことを言います。この能力は誰しも潜在的にもっていると考えられています。 これから私が書いていくことは、ジャンルを超えて多岐に渡ることになりますが、自分の潜在能力を使って、いま私たちの目の前にあること、起こっていることの真実に少しずつ近づいていけたらと思っています。

HSCは発達障害ではありません~5人に1人はHSC(HSP)です

「心も体も、何に敏感かは一人ひとり違います。」~エレイン・N・アーロン(カナダ・臨床心理学博士 2015)

HSC=「ひといちばい敏感な子(The Highly Sensitive Child)」アーロンの心理学の概念です。(大人はPerson)

「敏感」だが「過敏」ではないHSCHSP

 HSCとはどんな子どもなのでしょうか?今メディアでも扱われることが増えたので興味を持たれた方もいるのではないかと思います。関係した本も多く出版されています。

 HSC(HSP)の提唱者のアーロンの著書をまだ読んでいない方は、HSCを正しく知るために、まずアーロンの著書を読んでください。

 

 ここではアーロンの言う「HSC・ひといちばい敏感な子ども」とはどんな子どもなのか、少しだけ触れてみたいと思います。

 かつて「敏感な」子どもに対しては、「臆病」「引っ込み思案」「内向的」「神経質」「恥ずかしがり屋」「怖がり」などと言われてきました。しかし、状況を細かく把握し慎重に行動しようとしている子どもに対して、それらの言葉を使うべきではないと、アーロンはこの本の「はじめに」の中で書いています。

 

 HSCの子どもは外からの刺激から多くの情報を得る「敏感さ」があります。「敏感さ」とは、ひとつひとつの情報の微妙な差に気がつくということです。

 HSCの子どもはフツーの人が見過ごしてしまいがちな情報でもきちんと把握しています。そしてそれらについてじっくりと考え、慎重に行動します。ですから「臆病」でも「怖がり」でもありません。また「過敏」で傷つきやすくもないのです。

 

 勿論、それぞれの子どもには得意分野があります。人間関係の雰囲気(空気)や人の表情、態度、感情、痛み、自然環境や天候の変化、植物や動物の変化の様子など様々です。

 ただ、とても敏感に気がつくことが多いので、情報に溢れている場所(例えば、賑やかな会合、皆の注目が集まる教室での発言、動きの速い団体競技への参加、音量の大きい音楽が流れるレストラン等)では圧倒されて動揺しやすく、疲れてしまって、とても苦手なこともあります。

HSC発達障害ではありません

 HSCの子どもはじっくり考えて、たくさん質問してきます。親には「なぜ?」がたくさん投げかけられることでしょう。不満や文句もたくさん言ってくることでしょう。

 いつも着ているシャツと生地が違う、部屋が臭う、食べ物が辛い、いつものメーカーの牛乳と味が違う、暑い、寒い、ジメジメしている等など。他の子どもが気づかないようなことをたくさん気にしますので「変わった子ども」「フツーの子と違う」と思われます。

 またHSCの子どもは、たくさんの情報を把握することができる半面、その情報処理をするための特別な才能や高い能力を必ずしも持っていない(その点はフツーの子と同じ)という特徴があります。ここまで説明すると、発達障害ではないことがわかってくると思います。 

 集中しにくさや不注意があるADHD(注意欠如多動症)や、相互的な対人コミュニケーションが苦手で一つのことへの興味関心が強く、こだわりも強い、情報処理の認知機能に偏りがみられるASD自閉症スペクトラム)とも異なっています。

 行動の似ている一面だけを見てしまうと誤った判断を子どもに押し付けることになってしまうので注意が必要です。判断には専門家に相談するのが一番近道です。但し、「HSCは人の特性を表わす心理学の概念」、「ADHDASDは認知機能の障害で医療の診断名」であることを知っておいてください。

 そして最も大切なことは、HSCであれ発達障害であれ、それぞれの特性は共通していても、人格が違う限り「一人一人の子どもの個性はすべて違っている」ということです。

 HSCの子どもへの理解を求めて、アーロンはこう言っています。

 「敏感さ」は個性である。しかし「他の子と違う子ども」なのだから「親も他とは違う親になる覚悟が必要だ」と。

HSCは「不登校」になりやすいというのは誤解です

 最近メディアでもHSCに対する誤解が多く語られています。先ほど触れたように、HSCは発達障害でありませんし、もう一つの誤解である不登校の原因でもありません。正確に言えば、HSCの子どもは不登校になることもあるし、不登校にならないこともあるのです。これは他の子どもとなんら変わりません。

 

 HSCは他人の感情に敏感なので、その人を慰めたり安心させて心地よくしたりすることが得意な子どもです。普段の学校生活では、先生にとっては、落ち着いた温かいクラスを作っていく上で欠かせない子どもでもあります。

 でも、HSCは、共感力が強く他人の痛みや苦しみに気がつきやすい所もあります。同じ教室の中でとても悲しい思いや怖い思いをしている子どもにすぐに気づいて、自分のことのように心を痛めることは珍しいことではありません。でも、その原因が先生からの強すぎる叱責だったり、同級生からの酷い嫌がらせを毎日受けている子どもに先生が気づかなかったりしたらどうでしょう。HSCの子どもは、それが他人のことであっても平気ではいられず、登校を続けられなくなるかもしれません。しかし「敏感」であることが不登校の原因ではありません。「敏感」な子どもが過ごしにくい鈍感で危険な環境が原因なのです。

 言い換えれば、HSCは環境の微妙な変化に気づき、早めに様々な危険を回避できるとも言えます。

社会はHSCHSP)から、たくさんの恩恵を受けています

 アーロンは言っています。HSCの得意なことは、例えばギターのチューニング、皆に喜んでもらえるパーティの記念品選び、機転の利いた言葉遊び、微妙な結果を予想するチェスや将棋、他人の雰囲気や表情・態度を読み取ること、自然環境の変化に気づくことなど。様々なタイプのHSCから、社会はたくさんの恩恵を受けています、と述べています。

 HSCは5人に1人いて20%がHSC(HSP)であることが、人が社会を作って生きていく上で必要だったから、と考えることもできると言っています。

 

 一度あらためて自分の周りの人たちをよく眺めてみてください。多くのことに敏感に気づいて、周囲の人たちの助けになっている人がきっといるはずです。HSCは「ひといちばい敏感」なため環境からの影響を多く受けます。それ故に多くの変化に気づき、じっくりと考えながら周囲の人々を気遣って生活しています。HSCを理解し、共に生きて、その恩恵を受けることを大事に思える社会を私たちは作らなくてはいけません。

 HSC(HSP)が潤滑油の役割を担ってくれていることで社会は住み心地の良い温かさや気遣いのあるものとなっていくのです。HSC(HSP)が健康に育つ住み心地の良い社会は、より多くの人々が安心を得られる、苦悩や絶望から遠くにある社会でもあるのです。

HSCのチェックリスト

 チェックリストを見てみるとHSCがよりわかりやすいと思いますので、載せておきます。

 23項目中13項目以上当てはまったらおそらくHSCであるとアーロンは言っています。(「はい」が一つ二つでも、その度合いが極端に強ければHSCの可能性はあります)

 

質問に感じたまま答えてください。子どもについて、どちらかと言えば当てはまる場合、過去に多く当てはまっていた場合は「はい」、まったく当てはまらない場合か、ほぼ当てはまらない場合には「いいえ」と答えてください。

 

1,すぐにびっくりする 

2,服の布地がチクチクしたり、靴下の縫い目や服のラベルが肌に当たったりするのを嫌がる。

3,驚かされるのが苦手である。

4、しつけは、強い罰よりも優しい注意の方が、効果がある。

5,親の心を読む。

6,年齢の割に難しい言葉を使う。

7,いつもと違う臭いに気づく。

8,ユーモアのセンスがある。

9,直観力に優れている。

10,興奮した後はなかなか寝つけない。

11,大きな変化にうまく適応できない。

12,たくさんのことを質問する。

13,服がぬれたり、砂がついたりすると着替えたがる。

14,完璧主義である。

15,誰かが、つらい思いをしていることに気づく。

16,静かに遊ぶのを好む。

17,考えさせられる深い質問をする。

18,痛みに敏感である。

19,うるさい場所を嫌がる。

20、細かいこと(物の移動、他人の外見など)に気づく。

21,石橋をたたいて渡る。

22,人前で発表する時には、知っている人だけの方が上手くいく。

23,物事を深く考える。

 

いかがでしたか?

詳しくはアーロンの著書を、ぜひ読んでみてください。