リフレーミング(reframing)してみよう

~「リフレーミング」は心理学の家族療法の技法で、これまでと異なる角度からのアプローチ、視点の変化、別の焦点化、解釈の変更という「フレーム」の架け替えによって、同じ「絵(状況)」でも違った見え方になり、自分や相手の生き方の健康度を上げていくことを言います。この能力は誰しも潜在的にもっていると考えられています。 これから私が書いていくことは、ジャンルを超えて多岐に渡ることになりますが、自分の潜在能力を使って、いま私たちの目の前にあること、起こっていることの真実に少しずつ近づいていけたらと思っています。

パンデミック後の不登校支援に必要な視点とは何か

パンデミックが終わっても、コロナ禍の影響は現在進行中です。

小中学生の不登校はすでに約30万人になり、潜在的不登校を含めると40万人を超えるという民間調査も報道されています。(ケースはすべて実際のものとは変えています)

 パンデミック後の不登校の激増の背景を考える時、コロナ禍抜きで子どもを理解することはできません。それぞれの学齢の子どもたちがコロナ禍をどう生きてきたのかを知って、個々のより深い不登校理解につなげる姿勢が求められています。

 

 子どものコロナ禍での3年間の成長過程の学齢ごとの表にしてみました。それぞれの学年の子どもに何があったのかを子ども側に立って見てみましょう。

パンデミック期の子どもの学齢年表(2023年度が現在の学年です。)

年度 2023 2022 2021 2020 2019  
4月年齢           3年の割合%
5 年長 年中 年少 2歳児 1歳児 60%
6 小1 年長 年中 年少 2歳児 50%
7 小2 小1 年長 年中 年少 43%
8 小3 小2 小1 年長 年中 38%
9 小4 小3 小2 小1 年長 33%
10 小5 小4 小3 小2 小1 30%
11 小6 小5 小4 小3 小2 27%
12 中1 小6 小5 小4 小3 25%
13 中2 中1 小6 小5 小4 23%
14 中3 中2 中1 小6 小5 21%
15 高1 中3 中2 中1 小6 20%
16 高2 高1 中3 中2 中1 19%
17 高3 高2 高1 中3 中2 17%
             
45(例) 親年代 44 43 42 41 6%
75(例) 祖父母年代 74 73 72 71 4%
  平常 徐々に平常に 活動制限 6月~新年度 2月~翌年度6月まで休校  
        分散登校    
        活動制限    

小学生は学年で経験の違いが大きい

2023年度現在の学年で、子どもたちの歴史を振り返りましょう。

小学校1年生

 現在の小学校1年生は、幼稚園、保育園では昨年途中まで活動制限があり、通常の集団活動を年度当初からすることは今年が生まれて初めてです。尚かつピカピカの1年生、友達出来るかな?のダブルハードルのある環境激変の船出です。人生の50%がコロナとは言え、記憶の殆どがコロナ体制の学年です。

 学校への適応はさぞ大変でしょう。「時間をかけてゆっくり」が問題の解決に繋がることが多いかもしれません。

 

小学校2年生~4年生

 2年生から4年生はそれなりに小学校の経験はありますが、通常活動は今年が初年度です。特に4年生は小学校入学時が一斉休校と重なりました。いつ始まるかわからない小学校生活はとても不安だったでしょう。3年生もコロナ真っただ中の入学でした。給食の黙食が当たり前の学年です。全校での運動会などの行事も初めてになります。

 

小学校5年生

 5年生は、入学して1年生でやっと学校に慣れて2年生に繋がる学校適応に最も大事な時期が一斉休校になり、それから約3年間のコロナ活動自粛に突入した学年です。

 2月に1年生が突然終了し、2年生が6月に始まりました。始まった学校生活の形はやっと慣れ始めたものとはまったく違ったものでした。最も苦労が多かったかもしれません。

 この年の2年生の不登校がとても増えたのを憶えています。ある大人しい女の子は、新しいクラスで友達が作れず不登校になりました。休み時間はいつも自分の机で、ひとりで折り紙を折っていたそうです。

小学校6年生

 6年生は小学校では唯一、平常時からコロナ明けまではっきりと記憶しているので、遠足にも行けないつまらない中学年期(3、4年生)を過ごしたと思っていることでしょう。今年は思っていた集団活動が2年生以来やっと戻ってきたと感じているかもしれません。最高学年としての有能感も感じているのではないでしょうか。

 6年生の不登校も多くなっています。小4で不登校になった女の子がいました。元々とても几帳面でしたが、消毒習慣によって潔癖症が強く出はじめて、毎日カバンの中の学用品の鉛筆一本一本、教科書までを消毒することが止められず、疲れ切って不登校になりました。

 この学年は以前の日常を知っているために、マスクや消毒の習慣への個人の意識の差が大きく、人間関係を難しくしている面もあったと思います。

 5年生も含めて、子どもたち同士の暴力的な関わりや学級崩壊も増えていると聞いています。ギャングエイジと言われる時代の社会化が遅れているのかもしれません。

 

まとめ

 このように小学生では各学年で体験したこと、学校生活で見えるものが大きく違っているのです。それでも、今年以降の小学生は、小学校での通常の集団生活を高学年で経験できる機会をそれぞれ持っています。

中学生も結構つらいよ

 中学生に目を移すと、なんと3学年共に小学校では高学年としての通常活動が制限され、良い所をみせる体験が少なかった学年です。

 以前から「中1ギャップ」と言われるほど小中の環境の変化が大きく、それが中学での不登校の増加にも繋がっているとされていた上に、小学校高学年での経験も等しく飛ばされています。その上、更に中学でも未体験の通常活動に戻るという環境変化に晒されています。しかも人生の2割以上がパンデミックだったのです。

 

 ある中学2年生の男の子は、以前から母親が学習に対して厳しく、コロナの時期もオンラインで塾の勉強をさせてきましたが、在宅勤務になった父親までも進学や成績のことに口出しを始めたことで更に追いつめられて、不登校気味になりました。しかし母親はこの子の不登校を強く非難しました。それからは母親のひと言ひと言にイライラした表情を見せ始め、ついに母親に対して暴力を振るうようになりました。警察沙汰にまで発展しています。

 

 すべての子どもが大きく影響を受けて不適応を起こしたわけではありませんが、パンデミックによる社会の変化が、最近の小中学生の不登校の激増や、子どもの暴力的なトラブルの増加とまったく無縁であるとは言えないでしょう。

親世代のストレスと絡み合う子どものストレス

 現在の小中学生は、コロナ禍によって、学習機会、体力作り、友人との関わり、友達作り、集団の協力、お互いの姿を見て学ぶ社会的学習、豊かに表現する情緒の発達、話し合いによる思考力の発達、自己表現、家庭内で果たすべき役割などすべてが阻害されています。

 特に何らかの不適応を起こした子どもたちを理解していくためには、通常の3年間であれば日常の体験の中で自然に身についていたものが飛ばされていると捉える視点が必要です。

 

 その上に個人の能力、発達、家庭環境要因などが複雑に絡み合って、今の子どもたちの状況、状態があるのです。

 小中学生の親の世代を40代中心と考えると、仕事のやり方や家族の関係性なども変化していて、あまり自覚がないままストレスを抱えていることもあります。誰もが外的な経験が減って、働き方のどの変化に追われて年だけは取ったのは事実です。40代は体力的にも年々下り坂を降りていきます。

 パンデミックの3年間は人生の6%程度で、親世代(40代)から見ると3年間の人生への影響はさほどではなかったかもしれませんが、親の受けたストレスの影響はこの時期の不安定で振れ幅の広い子どもたちにはとても大きいものです。そのことを子どもの身になって捉え直してみることが、今の子どもたちの言動への理解に繋がります。

状況は「パンデミック前には戻れない」という認識を支援ベースに

 メディア報道や行政も、社会生活がコロナ前に戻ったと判で押したように宣伝しますが、それは経済活動や社会生活のシステムとしての回復を示しているだけに過ぎません。

 ひとりの人間にとっては、この3年間を回復してやり直すことは永遠にできません。逆にこの3年間の積み上げられた時間と経験はなかったことにはしてはならないのです。

 

 現在の日本では、少子化でありながら不登校が激増し、子ども同士の人間関係での傷つき、家庭内での問題などが顕在化し、子どもたちの自傷行為、薬物依存、自殺企図なども広がっています。そしてその背景には、大人たち自身も生きづらい格差社会があります。

 この時代を生き抜くためには、私たちはパンデミックでそれぞれが経験した時間の記憶をもとにして、今を見ていく必要があります。

 

 その年代世代に何が起こったのか、そのことで、変化した日常に何を感じて生きてきたのか、日常生活でどんな思いを以前よりも持ちやすくなったのかを想像しながら、子どもと親と、さらに周りの人たちが向き合うことではじめて、相互に支え合ってこれからを生きることができるのです。