リフレーミング(reframing)してみよう

~「リフレーミング」は心理学の家族療法の技法で、これまでと異なる角度からのアプローチ、視点の変化、別の焦点化、解釈の変更という「フレーム」の架け替えによって、同じ「絵(状況)」でも違った見え方になり、自分や相手の生き方の健康度を上げていくことを言います。この能力は誰しも潜在的にもっていると考えられています。 これから私が書いていくことは、ジャンルを超えて多岐に渡ることになりますが、自分の潜在能力を使って、いま私たちの目の前にあること、起こっていることの真実に少しずつ近づいていけたらと思っています。

「東京都スクールカウンセラー大量雇止め」にみる都政の子ども支援軽視 ~公務員の会計年度任用は冷酷な非正規雇用制度です

「派遣切り」以上の惨さ(むごさ)です。(20時間以下の雇用は雇用保険対象外)

ブラックリスト」があるという噂も聞こえてきます。

東京都で、ベテランのカウンセラーが大量雇止めになりました

 2月3日付の東京新聞「簡単に代わりが務まるの?スクールカウンセラーが次々と雇止めに・・・それは「年度末」だから」という記事が掲載されました。」

以下記事抜粋を書きます。

(2/3付、東京新聞

「東京都の非正規公務員として児童生徒や保護者からの悩みを聞いて支援してきたスクールカウンセラー(SC)から、3月末で「雇い止め」に遭うとの訴えが労働組合に相次いで寄せられている。2日までに33人の都SCが相談した。労組の担当者は「10年、20年と経験やスキルを積んで学校長の評価が高いSCが本年度で切られ、子どもや保護者への影響が大きい」と指摘する。」

「相談を受けたのは、SCや心理職らでつくる労組「東京公務公共一般労働組合心理職ユニオン支部」(豊島区)。1月29日、校長の評価が良く勤務に関し指導を受けたことがない人の不採用撤回や、採用基準の明示などを求め都教育委員会に団体交渉を申し入れた。」

「都SCは、全員が非正規の公務員。契約を1年ごとに区切る新しい人事制度が2020年度に全国の自治体に導入されたのを受け、それ以前から勤めてきた都SCは、23年度に都教委の定める契約更新の上限に達するため、24年度も働くには公募試験を受けなければならなくなった。」

「1月中旬に試験結果が出ると、「校長からの評価は良かったのに不採用だった」などの相談が都SCから労組に寄せられた。このうち都SCとして15年以上働き、今回不採用になった50代の女性は、自傷行為をする児童生徒の相談、関係性が悪い担任教員と保護者の間に入っての対応など、経験やスキルが求められる事案を担当してきた。校長に結果を伝えると「良い評価を出したのに納得できない。困る」と言われたという。女性は「更新上限がある単年度雇用では、雇用が不安定で安心して支援を続けられない」と話す。」

「労組は1月29日から、24年度の採用状況についてSCにアンケートを始めた。都内の公立学校へのはがきとインターネット上で実施し、2日時点の集計で330人が回答。雇用継続を希望した勤続年数が1年以上の人で、「不採用」または補欠に当たる「補充任用」となり、4月から正式採用されなかった人は計91人いた。自由記述では「不採用だったことよりも、自分の仕事を軽く見られていることに憤りを感じる」などの意見が寄せられた。」

以上「東京新聞」抜粋

東京都での出来事は氷山の一角です同様なことが少なからずどこでも起こっています。

 SCの校内での業務についての勤務成績は管理職が評価して提出しますが、概ね中庸から高い評価のSCが多いと言われています。しかし、現実には、その評価とは関係なく、会計年度任用の雇止めに当たる年度に、来年度以降の公募試験を受検すると、補欠もしくは不合格になることが相次いでいます。

 公募試験は書類審査と短時間の面接が主流で、そこで長年の現場経験者に大きく差がつくとは思えず、何を基準にしているのか疑問視されています。

 公募試験の合否の基準が不明確で、実際に長年その自治体での業務に貢献してきた多くのSCが雇用を一方的に切られてしまうことが増えています。多くのSCは、同年度には他の自治体の公募試験を両天秤で受けていないために、不合格や補欠になってしまうと、来年度の新たな雇用先の就職活動を1月末から慌てて開始しなくてはなりません。当然同じようなSCに仕事はこの時期からでは見つかりません。

 

 そのため、様々な憶測が飛び交います。

ベテランになって自分の仕事の意見を言うようになると嫌われるのか?

教員の支援策に対して多く提案して口うるさいと思われたのか?

新人の方が大人しく言うことを聞くから入れ替えるのか?

肌が合わなかった管理職が裏で何か言ったのかも?

ブラックリストがあるのか?

身体に障害があるからではないか?

などなど・・・留まるところはありません。生活がかかっている死活問題ですから当然そうなります。

 「自分の仕事を軽くみられていることに憤りを感じる」と言ったSCがいたそうですが、雇止めを前提とした会計年度任用しか選択の余地のない、非正規公務員雇用そのものが、職業への冒涜なのではないかと思います。

 非正規雇用6年で正規雇用にするという「働き方改革関連法」を逆手に取った、5年以内で非正規雇用を雇止めにする会計年度任用は、労働搾取の典型です。

 新聞記事では、「定期的に公募をかけて採用する理由を都教育庁職員課は「公務の職に広く市民が就けるようにする平等取り扱いの原則と、試験で選考する成績主義を踏まえるため」と説明する。」とあります。どんな顔をして言うのでしょうか。意味不明の屁理屈としか言いようがありません。

 

 実際、日本の非正規雇用の公務員は6割で、現場の専門職やサービスを担う職種も多く、その7割が女性です(パブリック・ワーキングプアの元凶です)。行政が言う公平性や平等主義、人権尊重などは、もはや空念仏にしか聞こえません。

子どもの教育や支援は軽視されています

 SCは、悩みを抱える子どもや保護者、教職員らに助言する専門職で、東京都では、1565人の都SCを配置しています。(2023年度)。1人が複数校を担当する場合でも、週2日の勤務で20時間を超えることがないために、雇用保険の加入はできません。

 来年度はどうなるかわからない、3年で雇止めになり雇用保険もないという、不安しかない雇用に、子どもや親への支援の軽視がよく現れています。

 

 不登校がコロナ禍で全国30万人と激増し、その他にも虐待、いじめ、自傷行為自死、薬物乱用、性被害・加害、暴力行為など諸課題に溢れた学校現場では、毎日長時間労働で疲弊した教員とSCが連携しながら、対応に追われているのが現実です。

 劣悪な労働環境の教員と、来年はいないかもしれない不安定雇用のSCが業務していることへの想像力を少し働かせれば、子どもや保護者にとって何が必要なのかは明らかです。

 継続的に安定して継続できる相談体制と、日頃から先生が丁寧に見てくれる教室があることが困難な学校を誰も望んではいません。これは学校教育や公的相談機関への信用にかかわる問題でもあります。

 「どうせ相談しても無駄」「何もしてくれない」「がっかりするだけ」という多くの声が、支援者側からは聴こえてきます。

まずSC自身が労働者として声を上げることが第一歩です

 どんな社会問題であっても当事者が声を上げなくては、事態は動きません。

 自分の雇用条件や内容、職務規定、休暇等の権利は勿論ですが、仕事上の差別や不都合、トラブルがあった時の対応方法、相談できる労組の窓口、非正規公務員としての要求がある場合の権利や方法など、自分への不利益について申し立てができる知識が予め必要です。

 家族の生活や仕事の継続を人質にとられて、劣悪な労働条件で労働を搾取されることは、人間社会ができてからずっと続いてきたことです。その渦中に自分が置かれた時に自分ができることを日頃から考えておくことも大切です。

 本来SCは心理職として、社会の縮図である学校社会の中で、生きづらさや傷つきを背負った子どもを支援する仕事です。SCは、社会における差別や偏見、暴力や紛争、貧困、格差などを容認している人間には向いていません。仕事上の不利益や雇用の人権無視などについても、黙して容認することは自己矛盾であり、仕事への誠実さを捨てる行為です。

 働く労働者として、雇用者側から理不尽なことが強いられた時は、しっかりと声を上げるのが民主主義の社会を守ることにつながります。それをしなければ、何も変わらないどころか事態は悪くなる一方です。

 今回の東京都のSCの苦しみの声は、声を上げたことそのものが希望への第一歩になっているのです。

 

「どうせ相談したって無駄」「言っても何も変わらない」「自分に不利益になるだけ」という声は、どこかで聞いた声に似ていないでしょうか。