リフレーミング(reframing)してみよう

~「リフレーミング」は心理学の家族療法の技法で、これまでと異なる角度からのアプローチ、視点の変化、別の焦点化、解釈の変更という「フレーム」の架け替えによって、同じ「絵(状況)」でも違った見え方になり、自分や相手の生き方の健康度を上げていくことを言います。この能力は誰しも潜在的にもっていると考えられています。 これから私が書いていくことは、ジャンルを超えて多岐に渡ることになりますが、自分の潜在能力を使って、いま私たちの目の前にあること、起こっていることの真実に少しずつ近づいていけたらと思っています。

夏休みの「不登校」考 (その1)

不登校」の子どもや親たちにとって葛藤しがちな夏休み

夏休み明けのプレッシャーをどう乗り越えたらいいでしょうか

子どもの成長を感じられる夏休みのために

不登校でも夏休みにリラックスして元気に休めることが大切です

 不登校の子どものタイプは様々です。もちろん夏休みの捉え方や過ごし方にも違いがみられます。ここでは、いくつかのありがちな例を挙げておきます。(どれかに必ず当てはまるということではありません)参考にしてみてください。

〇学校のみんなが夏休みなら、自分もゆっくり休めて外出の抵抗感も低減するタイプ。結構友達とも平気で交流する場合もあります。本人親ともに夏休み明けに再登校することを想定してないとかえってエネルギーチャージが高まります。

 

〇休みの分、気分は少しリラックスするけれど、学校のみんなに会ってしまいそうで外出に抵抗があるタイプ。遠方の家族旅行や帰省先では比較的元気に過ごせる場合も多くあります。夏休み明けの再登校を目指すと後半に気分の落ち込みなどがみられることもあります。

 

〇夏休みに入っても緊張感は変わらず、引きこもりがちで、精神的に「夏休み」にならないタイプ。あまり変化がないのは良いところでもありますが、休み明けの再登校を目指していなくても、学校再開のストレスから夏休み後半に精神的に追い詰められる場合もあります。

 

〇夏休み明けの再登校を目指して、宿題もこなし、徐々に外出もして準備する生真面目なタイプ。夏休み後半に向けて緊張感が高まり、葛藤状態に入りやすくなります。休み明け当初は朝から毎日再登校しても、長続きしないことも多く、その際の挫折感は大きくなります。

 

 それぞれのタイプで夏休みはこんなに違います。似ているタイプがあったでしょうか。タイプによって少し気をつけるところがありそうですね。

 少しだけでも今までの苦しい心を解き放てる自由な「夏休み」にできたら、「心の健康」を取り戻すことにつながるかもしれません。

登校プレッシャーがなくなる時こそ、心の健康度・QOLを上げるチャンス

 長期休業は、心身ともに休養するチャンスです。しかし、不登校の子どもたちは、日頃学校に行っていないという罪悪感や引け目から。夏休みを謳歌できない傾向が以前から多くあります。

 このことは、日々登校せず欠席していても「心は休まらずにいる」ことをよく表しています。「毎日が夏休み」と陰口を言われている、こんな自分が「夏休み」にフツーに遊んでいていいのだろうかと思ってしまうのです。そうして一年中「心の休み」がない状態が続いてしまうのです。

 これを変えるきっかけを与えられるのは身近にいる親(大人)の働きかけです。

 心の底では「学校に行ってほしい」と思っていても、子どもの身になって、「1学期はつらかったね。よく頑張ったんだから、夏休みは何も考えず好きなことをしてゆっくり休みなさい。たまには一緒に出掛けよう。夏休み明けには学校に無理していかないこと。あなたが行きたくなった時に自分で決めて行けばいいんだから。」というような言葉かけをしてみてください。

 

 きっと子どもは親の真意を測りながらその言葉を聞くことでしょう。親はその時の子どもの反応は気にせず、子どもに向けて「言葉にした事実」が大事なのだと思ってください。

 

 夏休みであっても、親にとっては仕事もあり、多忙な日々であることは変わりませんが、休日や休暇時には、子どもを誘って(あるいは子どもに誘われて)ぜひ一緒に買い物、イベント、旅行などに出掛けてみてください。

 その時は、子どものドタキャンもOKにしましょう。何かやってみようと思ったことは大きな変化です。外出を子どもが渋った時は、家で子どもと楽しめる趣味や、料理、庭仕事、モノづくりなどをしてみてください。

 先程のような、親がかけた言葉を行動で示す時です。

 

 きっかけを作って、気分を変えてみる。なにか普段と違うことをやってみようかなと思わせる。

 「心が動くこと」が子どもの生活の健康度・質(QOL)の向上の第一歩です。

 自分から、ちょっと早く起きる子どもの姿がみられるかもしれませんね。

自己肯定感という心の健康
 子どもの支援は、不登校に限らず、子どもの心と身体の健康を第一に考えることからはじまります。
 不登校の場合は、「登校拒否」と言われていた頃よりも世間の理解が進んだとは言え、まだまだ学校や世間からの偏見や無理解に晒されているのが現状です。そのため、焦る親の姿を間近に見ながら、不登校の子どもたちは「頑張れない、フツーに出来ない」自分を責めて自己評価を下げ、自己肯定感が低い状態になるのがスタンダードです。

 

 低い自己肯定感の影響は、子どもから他者との交流意欲を奪い、孤立感を深めていきます。親にとって自分が負担になっていると感じる、学校でもお荷物になっていると思うようになるのは子どもの存在にとって既に危機的な状況です。不登校の子どもの増加と、自傷行為希死念慮の子どもが増えていることはけして無縁ではないのです。

 

 不登校になって低い自己肯定感をもつ子どもに対して、親はつい何かを頑張って取り組ませて、達成感を得させようとしがちですが、期待に応えようとする子どもはますます疲弊し、子どもからエネルギーを奪うことになります。

 低い自己肯定感をもつに至る過程で子どもは既に疲弊し、エネルギーを失っています。そんな子どもにとって支えになるものは何かを考えてみてください。

 

 これまでの多くの場合、親(身近な大人)が、「子どもの今のありのまま」を肯定的に受け入れようとする思いが、子どもに伝わることが子どもを支えます。「変われ」というメッセージは今の「否定」でしかないのです。

 人間は相互的な存在です。身近であればあるほど、いつも影響を与えあっています。片方だけが元気にもなれないし、落ち込むこともできません。共に生きるために手を差し伸べなければ、HELPも出せないのです。

 先ほどの夏休みの実践はこのことにつながる親の関わりのひとつになり得るのです。

言葉に頼らずに気持ちを伝える

 しかし、親は自分の思いが強すぎて、なかなか子どもの気持ちをキャッチできません。子どもの気持ちが知りたくて、一方的に問いただしがちです。問いただされた子どもは、答えになるような言葉を探して答えることもありますが、本当の所は子どもにもわからないことの方が多いのです。


 人間は、大人でも心の奥で本当に思っていること感じていることを正確に言葉にすることには時間がかかります。まして言語発達の未熟な子どもには難しいことです。ですから子どもの気持ちの言語化は、不登校の安定期から回復期になってやっとポツリポツリと現れ始めるのが一般的です。

 親が良かれと思って、早く何とかしたい気持ちがかえって子どもを追い詰めてしまうこともあります。何も答えなくても、言いたくなくても、言葉にならなくても、今のそんな子どもを「ありのまま」受け入れ、今の子どもと過ごす時間を、親にとっても楽しい時間にしていってください。親の楽しそうな顔をみて、きっと子どもはこう感じるはずです。「自分は大事にされるに値する人間だ」「生まれてきて良かった」と。

 自分を肯定できる「自己肯定感」は心の健康そのものなのです。