「不登校」の子どもたちの多くは、心理的に「ゆっくり休める夏休み」をなかなかもてません
夏休み明けに向けて、これ以上子どもを追い詰める親や教員にならないために
今回は、不登校を子どもの目線で理解するためのマンガを紹介します

「マンガでわかる!学校に行かない子どもがみている世界」(2024:來來珈琲店)
毎日新聞(2024年7月12日)で、西野博之さんの新刊「マンガでわかる!学校に行かない子どもがみている世界」(2024)が紹介されました。
西野さんは、不登校等の子どもたちの居場所として1991年に川崎市に「フリースペースたまりば」を開設した「フリースペース」の草分け的存在です。
その後2003年にオープンした「川崎市子ども夢パーク」内に日本初の公設民営のフリースペース「えん」を開設しました。現在は国内外から年間約200件の視察も受け入れています。施設の子どもたちの日常をドキュメンタリー映画「ゆめパのじかん」(2022)も公開されています。

「マンガでわかる!学校に行かない子どもがみている世界」の主な内容
・早期の習い事もストレスに…
・親を縛る「普通」や「世間」
・果てしなき「原因探し」
・昼夜逆転は「心を守るため」
・ゲームは「命つなぐツール」
【毎日新聞(2024年7月12日)より抜粋】(記事:磯崎由美)
出版の動機は、少子化の一方で不登校や自殺が増加の一途をたどることへの危機感だ。22年度の国の統計で、不登校の小中学生は約29・9万人と過去最多。自殺者も23年は高校生を含め513人と高止まりしている。
「学校に行けないだけで絶望し、自ら命を絶つ子をなくしたい。そんな活動の原点に、今こそ立ち返らねばと思いました」
子の数が減ったぶん、親の目は1人の子に集中しがちだ。「早くから始める習い事が子のストレスを増すことも。小学校で体育が嫌になり不登校にならないようにと、幼稚園児に逆上がりの家庭教師をつけた親もいます」
そこまでして不登校になると、親は自分の育て方を責め、子は期待に応えられない自分を責めていく。
漫画のプロローグは不登校相談会。参加した親たちが口々に不安を訴える。
母「普通に学校に行ってほしいだけなんです」
父「大人になったらやっていけないですよ」
祖母「ご近所の目が気になります」
「普通」や「世間」の物差しに苦しむ大人たちに、西野さんが語りかける。
「将来を考えて何とかしなければって誰でも思いますよね。でも子どもは未来でなく今を生きているんです。親としてできるのは、自ら動き出そうと思えるような環境を整えてあげることではないでしょうか」
(中略)(不登校の原因探しについて)
「多くの子は自分でも登校できない理由が分かりません。無自覚の嫌なことが少しずつたまっているのでしょう。まずはゆっくり休ませ、言葉にならない思いに寄り添うところから始めませんか」
(中略)(昼夜逆転について)
「心が壊れそうなところまで追い込まれたとき、昼夜逆転が生まれやすい。つまり自然と朝起きられない体を作り、自分の心を守っているのです」
心が安定して意欲が湧いてくると、自然と起きられるようになっていく。「心配しすぎず、今は必要なプロセスだと信じてあげて」
(中略)(ゲームへの依存について)
西野さんは不登校を経て成長した多くの若者が「ゲームがあったから何とか生きられた」と振り返るのを聞き、ゲームが自己否定の感情を和らげる役割を果たしていると気づいた。時間ルールを設けることなどについてもアドバイスしている。
(中略)(最後に)
西野さんは訴える。
「大人のまなざしが肯定的に変わったと感じられたら、子どもは自然と心に意欲が芽生え、自分のペースで歩き始めます。まずは心の中に『だいじょうぶのタネ』をまきましょう」
(以上、毎日新聞記事)

不登校の多くの子どもたちから学んだ著者の支援者としての立ち位置が読み取れます
不登校の子どもたちの行動を子どもの側から理解することで親たちの不安を解消し、子どもが心の健康を取り戻していく方向をメッセージとして発信しているのがこのマンガの大きな特徴です。
不登校になった子どもの周りで起こりがちな「あるある」エピソードを、子どもの目線で描いているので、親や教員の不登校の子どもの理解のためにわかりやすいものとなっています。
その底流には、大人たちが自らの不安から子どもたちを追い詰めることを止め、子どもの行動を肯定していく。そうやって最優先に子どもの命と心の健康を守ることが大切であるという信念に貫かれています。
それは一方的な大人の思いの押し付けではなく、著者自身が支援者として手探りで取り組んできた、不登校の子どもたちの居場所づくりの日々の中で、そこに集う多くの子どもたちの成長から学び取ったものであることが想像できます。

フリースペースえん(施設での一日のプログラムは子ども自身が決めます)
不登校の子どもへの理解の一助に
不登校が甘えである、怠けている、親が悪い等の無理解や偏見は、いまだに社会全体に根強くあります。それは教育現場にも、とても強く根を張っています。学校の不登校の支援マニュアルがあっても、形骸化している学校もあります。
どの世界でもそうですが、システムや形があっても、最後に魂を入れるのは人間です。特に、子どもの支援の現場では、支援者がどこを見て、何を大切にして仕事をしているのかが問われます。
そのために日頃から外部からの情報を取り入れて勉強し、同僚の姿に学び、被支援者(子どもたち)から多くの気づきをもらう姿勢が不可欠です。そういう意味では、教育も支援も同じなのです。
不登校の子どもに接する親や教員、フリースクールの支援者の皆さんなどには、このマンガは子どもの前に自分が立つ時の一助になります。
子どもの自律性と自己決定を尊重し、子どもの心の健康と成長を見守ることができる能力が、支援する大人たちには不可欠なのです。
