リフレーミング(reframing)してみよう

~「リフレーミング」は心理学の家族療法の技法で、これまでと異なる角度からのアプローチ、視点の変化、別の焦点化、解釈の変更という「フレーム」の架け替えによって、同じ「絵(状況)」でも違った見え方になり、自分や相手の生き方の健康度を上げていくことを言います。この能力は誰しも潜在的にもっていると考えられています。 これから私が書いていくことは、ジャンルを超えて多岐に渡ることになりますが、自分の潜在能力を使って、いま私たちの目の前にあること、起こっていることの真実に少しずつ近づいていけたらと思っています。

夏休みの「不登校」考(その3)

いよいよ「夏休み明け」が近づいてきました

気になる中学卒業後の「進路」、十五の春を考えます

「夏休み明け」  子どもも親も「心の健康」を第一に、明るく過ごしましょう

 長期休業の終了、学校の授業の再開、ここから冬休み、年末までの長い秋冬を想像して、夏休みの終わりは子どもも親も気が急き、落ち着かない気分になるものです。

 特に不登校の子どもたちの夏休み明けは登校を期待してプレッシャーを感じ、将来のことを考えて不安が強くなりがちですが、急な変化を求めずに、いつもどおり「変わらず」安定して過ごすことの方が重要です。

 

 それでも、どうしても中学卒業後の「進路」が気になってきますね。

 子どもが不登校になると、「進路」のことを考えて、親子で焦りを倍加して苦しんでしまいがちです。

 将来のことが心配になるのは当然なこと。だからこそ、できるだけ冷静に今の子どものケアを最優先に、慌てることなく「進路」の情報は親が先に得ておき、準備だけは淡々と進めておくことが賢明です。その後、子どもの変化、回復、成長に合わせて、持っている情報を有効に生かしていくようにします。

 また不登校の親同士が交流できる場に参加して情報共有をしておくことも、とても心強いものです。

不登校の子どもの中学卒業後の進路選択の一般的なパターン

  • 進学したい、高校卒業したい、大学、専門学校まで進学したい
  • すぐに高校生にはならないが学習したい、何かを身につけたい
  • 仕事に就く(アルバイトを含む)、家事を手伝う

※いずれにしても、「不調」になった時の相談や支援先を見つけておくことは重要です。(例:青少年対象の相談センター、スクールカウンセラー、主治医、デイケア、医療系カウンセラー、精神保健センターなど)

 

高校進学(実際に多くの不登校の子どもが高校に進学しています)

 「高校に行けるかどうか不安です」と、多くの不登校の子どもや親たちは言います。

 現在の社会状況から考えると、地域差や経済的格差もあって難しい面もありますが、単純に自分に合った高校を選ぶことに限定すれば、さほど困難ではありません。選択肢はとても多くなっています。ざっと紹介すると以下のようになります。

 

〇公立高校全日制、定時制通信制、(公立は過年度生不可が原則:最近はインクルーシブ校や不登校に特化した学校もできてきています。)※特別支援学校高等部(卒業後に大学受験資格はありますが、高校卒にはなりません)

 

〇私立高校全日制、専修学校通信制通信制は、不登校への手厚いサポートがある学校も)

 

〇高校のサポート校(通信制:全般的に不登校への多様で手厚いサポートがある)

・様々なスクーリング通学パターン 

・通学を基本にできる学校から、基本がインターネットですべて学習という学校まで 

・入学時期も春、夏、秋など選択できる学校も

 インターネットでちょっと調べるだけでも、多くの学校があり、様々な高校卒業資格の方法があることがわかります。

 自分に合った学力と学習方法、通学パターンや、学習ペース、学習環境、スクーリングの場所や方法、学校の職員の雰囲気、教室での人数、通学距離や方法、学校の特色(美術・音楽・メイク・ファッション・体育・語学などの多様なコースができてきています)などをよく検討して、事前に説明会や体験に参加して数校を比べてみるだけでも、それまでと見えるものが違ってきます。

 最近はネット主体の高校で、ほとんどの教科や行事までもリアルではない方法を提供している学校もあります。

 高校に進む気持ちがあれば、自分に合った学校が見つかる可能性はあります。しかし、各家庭の経済状況や、子ども自身の不安、親の希望、子ども自身の希望などの要因で、選択肢の数が限定されてくるのが現実です。

(経済面)

 公立の場合は、所得によっては学費が無償対象になりますが、私立の学費は高額で、特にサポート校は、提携高校の単位取得のためのサポート校という位置づけのために二重に学費負担が発生してさらに高額になることもあります。ただし、私立通信制高校やサポート校がすべて高額ということではないのでよく調べることが大切です。また、自治体ごとに助成金のシステムもあるので諦めずに調べてみてください。

(サポート面)

 最近は、公立でも不登校へのサポートのための高校も自治体によって作られつつありますが、総じて私立の通信制やサポート校のような個別の手厚く多様な支援体制はありません。

 私立通信制やサポート校は数も多く、サポート体制も手厚く、それぞれ特徴があるので自分に合った学校を選びやすくなっています。

 公立全日制でも、単位制の高校で制服やクラスの縛りがなく、比較的自由に通学できるところを選ぶ子どもたちもいます。公立の場合は、定時制通信制では特に先生や友人との「良い出会い」の有無が通学の継続に影響することが多いようです。

 また、高校生になると小中学校よりも同級生がずっと大人になるので、人間関係の距離が取りやすくなり、少し楽になる場合もあるようです。

不登校の高校選びの難しさ)

 不登校になることで、それまで目指していた志望校を変更しなくてはならない子どもも多くいるのは現実です。しかし、多くの子どもと親たちが現実を受け入れ、「心の健康」を第一にそれまでの進学への価値観を転換して、ストレスが低く、無理のない新たな進路を考えています。

 選択するのは子ども自身で、どの選択がベストだとはまったく言い切れません。誰でも人生に悔いを残さないことなどできませんが、親子ともども「心の健康」を大切にできる高校進学ができたら幸いです。

(進学をする不登校経験のある子どもをもつ親御さんに伝えたいこと)

1,入学して4月からすぐに通学できるかどうかはまったくわかりません。またどこかで疲れてしまうかもしれません。そのときに親自身が子どもにがっかりした姿をみせず、それまでの子どもの頑張りをほめて積極的に休養させてください。

 

2,単位取得や出席日数を気にしすぎて頑張ってしまうとどうしても過剰適応になりがちです。特に私立進学や通信制サポート校進学の場合、子どもは大きな経済的負担を親に負わせていることを意識してオーバーペースになることがあります。子どもには余計な気遣いをせず自分のペースを守りなさいと言ってあげてください。マイペースを知ることも目標です。

折れることなく、これからの3~4年の時間を最大限に使って、山あり谷あり子どもがゆっくり成長・回復していくことの方が自然です。逆に適応が上がっている時にこそ、安心せずに子どもの様子を注意してみてください。

 

3,不登校で学習に対するブランクがある子どもは、成績に関わらず学習への不安は高いものです。経済的に許せば、個人塾や家庭教師をつけて学校の勉強をサポートしてやってください。無理な場合は、年上のきょうだいや親が勉強を一緒に見てあげながら励ましてください。

 

4,つながっている定期的な相談機関での相談や医療的なサポートは、たとえ子どもの状態が安定していてもせめて高校の間は切らずに続けるようにしましょう。

高校進学しない場合(学習を続ける・就職する・アルバイト・家事を手伝うなど) 

 子どもや家庭の状況によっては、中3の段階で進路を決められないこともあります。

 公立高校は過年度生を原則受け入れないので、高校進学は私立高校やサポート校になりますが、進学までの間の学習先として、子どもの回復に合わせながら民間の塾や家庭教師などを利用できるといいでしょう。また自治体によっては通学範囲に公立の「夜間中学」がある場合、利用が可能な場合があります。

 進学したい場合は、前項の「高校進学」を参考に、自分に合った学校で自分のペースで学習できるようによく調べてください。見学したい時に見学でき、受験時期も緩やかにしている学校もありますので、遠慮せずどんどん学校に相談してみましょう。

 

 仕事やアルバイトに就いた場合は、親は職場や相談機関との連携を欠かさずに見守ってください。働くことは学校生活よりも厳しく高ストレスです。仕事の失敗や上司や同僚からの厳しい言葉が胸に刺さってしまうこともあります。

 もし当面学習や就職をしない場合でも、家だけのカプセルに閉じこもらないように、習い事や趣味、インターネットを活用しての交流・活動参加など、社会との接点を作っていきましょう。また、相談機関や支援機関のサポートを積極的に受けて、家庭外に居場所を作り、社会的な自立への道を歩んでいけたらと願っています。

不登校の経験を生かせるような進路選択を

 不登校になった経過を子どもたちに尋ねると、「黒歴史」と答えた子どもが何人かいました。本人にとっては思い出したくもないほど苦しんだ「真っ暗の過去」なのです。

 「黒歴史」と聴いて、子どもが不登校から精神的に立ち直って回復し、自分の将来に希望をもてた時に、「不登校」の記憶をなかったことにするか、あったことにするか、どちらが良いだろうか?と考えことがありました。 

 あなたはどう思いますか?

 もちろんどちらでも自分が「楽」な方でいいのですが、私は「あったことに」できた方がちょっとだけ「得」なような気がします。

 それは、「あったこと」にできるのは、少しでも「不登校」の自分への肯定があるからです。

 「不登校」になって苦しかったけれど、なったからこそ気づいたことがあったり、新しい出会いがあったり、自分の人生にプラスになったことがあるかもしれません。それが苦しみに比べたら取るに足らないほど小さいものでも、「かけがえのない経験だった」と気づけたらとても素敵なことです。

 

 成長できた自分を知ることは、大人になってからの他者を見る目、社会をとらえる目をもつことにつながります。それは「自分という人間」として生きることを肯定できる土台になっていきます。