9月の声を聞いてもまだ厳しい暑さが続いています。
でもよく見れば、建物の影も長く伸び、日の入り時刻も早まり、季節は確実に「秋」になっています
学校の夏休みも終わり、いつもどおりの朝の通勤通学の混雑も戻っています
これから中秋・晩秋を超え、冬に向かって、年度初めとは異なるストレスが、私たちにかかってくる時季でもあります

秋から冬にかけての「日照時間の変化」に関心を向ける
夏至(6/21)の頃がら2か月を経て、一日の日照時間は1時間半以上短くなりました。日の出(夏至4:25AM → 5:17AM)・日の入り(夏至7:00PM → 6:02PM)※時刻は横浜市(9/6)
これから冬至(12/22)に向かって、日照時間はどんどん短くなります。
3か月と2週間後の冬至の日の出は 6:47AM・ 日の入り 4:32PMとなり、9/6より一日の日照時間は3時間半ほど短くなる計算です。
「秋の陽はつるべ落とし」と言いますが、この時季の太陽の高さや角度、日照時間の大きな変化は、有機体である人間には大きな影響を与えます。季節を感じることなく、「体内時計」に無関心な生活を続けることは、心身の健康に良くない影響があることは以前から知られています。
最先端の高層ビルでの人工的な都会生活でも、自然豊かな地域の暮らしでも、人のDNAに組み込まれた「体内時計」は季節の変化に合わせて変化し、人の身体は平等に季節に適応的に生きようとします。
しかし、ここ数年は地球温暖化の影響で、かつての初秋から中秋、晩秋から初冬への、緩やかで微妙な移動性気候の移り変わりがすっかり失われてしまいました。
季節感よりも、猛暑の気温やゲリラ豪雨などばかりが関心事になりがちで、「体内時計」への関心は薄らいできているようにも感じます。

メンタル面での影響が出やすい秋から冬
夏にはまだ日中の暑さの残る仕事帰りの明るかった夕方が、次第に日の入りの時刻が早まって、師走の声を聞き「冬至」に近づく頃には、退勤時に外に出てると既にとっぷりと暮れていて、なんとも言えない侘しい感情を抱いた経験がある人は多いことでしょう。
秋からの日照時間の短縮と「つるべ落とし」の日の入りは、精神面でも「不定愁訴」(ストレスによる体調不良や抑うつ状態)を呼び込む要因になります。
また、「季節性感情障害」(seasonal affective disorder;SAD)という秋から冬にかけてうつの症状が現れ、春に回復する季節性のうつ病もあります。
また、冬至に向かう季節には、春から夏への「成長や躍動」とは逆の感情が生まれてきやすくなります。結実を引き換えに葉を落としていく落葉樹や、土に還っていく草花への感傷が自分の人生に重なることもあるかもしれません。
しかし、それをすべてを「負」の感情だと捉えずに、冬を越して「再生のために備える」季節でもあることを十分に意識しておくことが心身の適応を助け、健康度を維持します。
まず、人間にとって春から夏と、秋から冬に抱きやすい感情は違うのが自然なのだと「意識すること」が大切なのです。

秋から冬への季節をヘルシーに過ごすためにできること
一年の中でこの時期は、特に「季節の変化」を意識した生活を送れるかどうかはこれから一年間の健康を左右します。
前述のように気分が下降しやすく、さらに「体内時計」が大きく変化して徐々に夏季よりも長い「睡眠時間」が必要になります。
また、夏の休暇から年末年始休暇までの一区切りは、仕事上でも学校でも4カ月に渡る長丁場で、体力の消耗もあってストレスが高まります。
では、この時季をよりヘルシーに過ごすためのポイントを整理しましょう。

①【睡眠時間を増やす】
人間には夏季よりも冬季は10~40分長い「睡眠時間」が必要とされています。
秋の夜長は、つい夜更かししがちですが、「起床時刻」を一定に保ったまま、夏場よりも早く布団に入り、「就寝時刻」を前にもっていくことを目指します。
まず、第一段階は、心掛けとして、夏の定刻より遅くなることは避けます。
第二段階では、5分~10分早く床に入るようにしてみましょう。目標は低く設定してください。
それに継続的に取り組めるようになったら、朝の起床の体調をチェックしてみてください。目覚めた時の眠りの過不足の感じで、自分に合った「就寝時刻」がだんだんわかってきます。
できるだけ「睡眠時間」を不規則にしないことは、この時季を乗り越える健康の基礎になります。睡眠のリズムが定まらず、不規則に陥る「睡眠障害」になる可能性もあるので十分注意してください。
再び、立春(2/4)が過ぎて3月頃から「就寝時刻」を夏モードに調整してみてください。

② 心身の状態の低下を受け容れながら、けして無理をしない】
この時季は、日照時間による気分の下降と共に、年末までの長期間、仕事や学校が続いて、まとまった成果を期待され、何かとストレスも高くなります。緊張が長く続くことで、体力的にも精神的にも「キツい」時季です。
心身ともに「キツい」ことを、あらかじめ意識して心の準備をしておくことが大きな助けになります。
心身が疲れてくると、朝の通勤通学の足取りが重くなり、「やらねば」の思いが肩や背中にのしかかってくるような気分に襲われることもあるかもしれません。
不安や落ち込み、倦怠感、頭痛などの体調不良が伴う場合もあります。
そんな時に焦りを感じて、「出来るはずだ。やらねばならない」と、つい無理をしてオーバーワークをしたり、気分を無理矢理上げて乗り切ろうしたりしがちです。これが大きな落とし穴になります。
でも、意識して準備をしておくと、「やはり疲れてきた」「気分が落ちてきた」と自覚できるために、原因がわかっている分、不安や焦りが半減します。来るべきものが来たと思えるのです。
当然対処も早くなります。不調の兆候が出た時にセルフチェックして、早めに「休み」を計画的に取ったり「気分転換」を図ったりしてストレスマネジメントすることが可能です。
落ち込み気味の気分を受け容れ、疲弊した身体を「予定通り」と認知できれば、漠然と不安に襲われた時にも、無理に状態を上げようとせずに、睡眠と食事、休養を規則正しく保って、多くの場合は乗り切ることができるでしょう。
ジタバタせずに多少の苦しさを伴う「低空飛行」を容認して受け入れ、対処しながら低空を保って墜落せずに飛ぶことを優先します。
状況を悪化させるものは、無理をして「高空」を飛ぼうとすることがきっかけになることが多いのです。いわゆる「過剰適応」の状態です。
「高空」からの墜落は被害が大きくなります。多少苦しくても「低空」を飛び続けることを選びましょう。非常時は不時着できるかもしれません。
高空を飛んで元気に見せている人ほど危険なのです。

③【気分の不調の時は、まず身体をケアする】
先述した一定な睡眠時間と、バランスの良い規則的な食習慣、適度な運動から、不調を見直していきます。不規則な爆睡や徹夜、栄養過多の大食い、過剰な運動は論外です。
体調や気分に振れ幅が出ている時ほど、一定に保って「変わらない部分を意識する」生活習慣になるように心がけます。
「気分」は「思考」だけではなく「行動」に左右されます。身体を動かして適切な「身体感覚」を取り戻すことは、「気分」の安定につながります。
身体的な心地よさは副交感神経を活性化し緊張を和らげ、心身の緊張を解し、リラックスを生み出します。
どんな気分の時でも身体は生きようとしています。「生きている」感覚を呼び戻すことこそが健康につながるのです。

最後に、それでも不調が続いたら
体調不調や抑うつ状態など、日々のつらい症状が改善せずに1カ月以上続いたら、我慢することなく医療機関を受診して、相談してください。
人は日照時間の変化に無関心なのと同様に、今「健康」であることに鈍感です。しかし一旦大きなダメージを受けてしまうとそこからの回復にはとても時間がかかります。
ひとりの「健康」の問題は、共に生活する家族や、それを支える地域社会や所属集団と「相互的」に影響し合う社会問題でもあります。
自分の健康に向き合ってケアすることは、他者の痛みへの想像力を育むことでもあるのです。



























































