兵庫県知事や横浜市長のパワハラが相次いで告発されていますが、どうやら当事者は加害者意識がまったくないようです。
これは現代社会に増殖するハラスメント氷山の一角です。
実際は、職場・学校から家庭まで社会のいたるところで、無自覚な加害者によって「ハラスメント(harassment)」という「嫌がらせ」が続いています。
ハラスメント1回目は。「パワハラ」を取り上げます。

「ハラスメント(harassment)」=「嫌がらせ」とは
相手を不快にさせ、不利益と肉体的・精神的な苦痛を与え、人間としての尊厳を侵害する行為を指しています。
日本語では「〇〇ハラ」と略称されることが多く、種類は多岐にわたります。
代表的なものとしてはパワーハラスメント(パワハラ)やセクシャルハラスメント(セクハラ)、マタニティハラスメント(マタハラ)、モラルハラスメント(モラハラ)、カスタマーハラスメント(カスハラ)、就活ハラスメント(オワハラ)などがあります。
学校での「いじめ」、家庭での「DV」「児童虐待」、インターネットでの「誹謗中傷=荒らし」、近隣での「騒音」なども呼称は違いますが、広義の「ハラスメント」に該当します。
最近は、駅などで女性にぶつかる「ぶつかり男」や、電車内のドアの横を、乗降客がいてもけして動こうとしない「ドア横キープマン」などもマナー以前の問題になっています。

日本の職場での3大ハラスメントは、パワーハラスメント(パワハラ)、セクシュアルハラスメント(セクハラ)、そして妊娠・出産に関するハラスメント(マタハラ)の3つを指します。
これらは労働施策総合推進法などで企業への防止措置が義務付けられていますが、近年ではハラスメントの多様化・複雑化が進み、被害者は減ってはいません。
被害者は弱い立場の労働者である場合が多く、中でも非正規のパート・アルバイトの従業員のような立場では、「がまん」するのが当然という風土があるために、失敗への罪悪感から「ハラスメント」を受けているという自覚がなく我慢して泣き寝入りしまう人たちが多いのです。
加害者側からは、「今に始まったことではない。昔は問題にもされなかった」という声も聞こえてきますが、今まではそれが「問題にもされなかった」人権軽視の社会だっただけで、被害者が当たり前のように傷つけられることは今も昔も少しも変わっていません。
そして、実際は「問題にされるだけ良くなった」わけでもありません。ただ「やりすぎると問題にならない程度にやる」とか「問題にされないようにうまく?やる」とかのレベルに変わったにすぎず、社会の本質は変わってはいません。それゆえに被害者も加害者も「ハラスメント」の自覚がないことも多いのです。
では、実際に職場の「パワハラ」がどのようなものなのかを見ていきましょう。

職場の「パワーハラスメント」
(参考:厚労省 あかるい職場応援団から)
【パワハラの6類型】
①身体的な攻撃
〇殴打、足蹴りを行い身体に危害を加える。〇相手に物を投げつけ威嚇する

②精神的な攻撃
〇脅迫や名誉毀損、侮辱、ひどい暴言など人格を否定するような言動を行う。相手の性的
〇指向や性自認に関する侮辱的な言動も含まれる。(モラルハラスメントの含む)
〇長時間にわたって、業務に関する厳しい叱責を繰り返し行い精神的に追い詰める。

③人間関係からの切り離し
〇特定の労働者を仕事から外したり、別室へ隔離したりし、同僚が集団で無視をし、職場で孤立させる

④過大な要求
〇業務上明らかに不要なこと、私用雑用の押し付け、未経験者に遂行不可能な業務を強制する。

⑤過小な要求
〇業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じたり、仕事を与えなかったりする。
〇管理職であるにも関わらず、誰にでも遂行可能な業務を命じられる。

⑥個の侵害
〇私的なことに過度に立ち入り、職場外で労働者を継続的に監視したり個人の私物を写真で撮影したりする。
〇上司との面談等で話した個人情報(性的指向、病歴、不妊治療など)を本人の了解を得ずに、他の労働者に暴露する。

職場で起こりやすい他のハラスメント
「パワハラ」以外に、職場で起こりやすい「ハラスメント」としては、「セクシャルハラスメント」「マタニティハラスメント」「カスタマーハラスメント」「就活ハラスメント」などがあります。
〇「セクシャルハラスメント」(セクハラ)
・事業主や上司から性的な関係を要求されたが拒否したために、解雇されたり、部署を異動させたりするハラスメント。
・職場で労働者の腰、胸などに触る行為や性的な言動のため、労働者が苦痛に感じて就業意欲が低下し環境を悪化させるハラスメント。

〇マタニティハラスメント(マタハラ)
・働く女性が妊娠・出産・育児を理由に解雇・雇止めされたり、妊娠・出産に関わる職場で精神的・肉体的な嫌がらせを受けたりするハラスメント。

〇カスタマーハラスメント(カスハラ)
・顧客からの著しい迷惑行為。相談件数が増加傾向にあり、深刻化しています。

〇就活終われハラスメント(オワハラ)
・企業が内定を出す代わりに、学生に他社の選考辞退や就職活動を終了を強要する行為を指します。

※実際にチェックしてみてください。(厚労省 あかるい職場応援団から)
設問1 どんな嫌がらせを受けていますか?
( )足で蹴られたり、殴られたりしたことがある。
( ) 上司から同僚の前で、無能扱いする言葉を受けた。
( ) 他の社員との接触や協力依頼を禁じられた。
( ) 終業間際に過大な仕事を毎回押し付けられる。
( )営業職なのに、倉庫整理などを必要以上に強要される。
( ) 休みの理由を根掘り葉掘りしつこく聞かれる。
設問2 過去に受けた嫌がらせは?
( )皆の前で、些細なミスを大声で叱責された。
( ) 陰口を言われ、悪い噂を流された。
( ) 一人ではできない量の仕事を押し付けられた。
( ) 与えられる仕事の件数が他の社員よりも著しく少なかった。
( ) 不在時に机の上や鞄の中を勝手に物色された。
( ) 物を投げつけられて、身体に当たった。
設問3 毎日、恐れていることは?
( )先輩・上司に挨拶しても無視され、会話してくれない。
( ) 上司から誤った指示があったのに、始末書を書かされる。
( ) 与えられる仕事は、掃除や草むしりだけ。
( ) GPS付きの携帯電話で行動を監視される。
( ) 襟首・腕をつかまれ、説教される。
( ) 「会社に何しに来てるの?帰れ」と言われる。
設問4 ミスをしたとき、こんな仕打ちを受けたことは?
( )達成不可能なノルマを与えられる。
( ) 特定の業務のない部署に異動させられる。
( )スマホを勝手にのぞかれる。
( )いきなり胸ぐらを掴まれる。
( )「役立たず」「給料泥棒」と言われる。
( ) 1人だけ別室で仕事させられる。
設問5 日常化している、嫌な行為は?
( )仕事を何も与えられない。
( ) 家族や恋人のことをしつこく聞かれる。
( ) 髪を引っぱられる。
( ) 毎日「ブス」「ハゲ」などと呼ばれる。
( ) 1人だけ仲間はずれにされる。
( ) 連日、徹夜仕事を強要される。
( )お酒のお酌や隣の席に座ることを強要される。
( ) 職場で上司に性的な事を話題にしてからかわれたことがある。
( ) 上司に(独身男性を心配して)「どうして結婚しないのか」としつこく聞かれた。
設問6 こんなことを言われたことはありますか?
( )子どもが小さいうちは母親は家庭で育児に専念すべきと妊娠している時に言われた。
( )妊娠中の業務の配慮を相談したが、「妊娠は病気ではない、甘えてはいけない」と説教された。
( )一人目までは仕方ないが、二人目、三人目の産休、育児休業は、迷惑なので「図々しい」と嫌味を言われた。

どうでしょうか。これらはすべてハラスメントで、職権・権力に根差した暴力であり、人権を侵害する行為です。これらとまったく同じではなくても、似ていることが起こっていませんか?
職場のストレスは、仕事そのものの重みもありますが、人間関係にあることが多いものです。この機会に、今あるストレスの原因を少し見直してみてはどうでしょうか。
自分の立場が弱かったり、仕事を十分にこなせていないと感じていたりする人にとっては、上司や同僚からの言動のひとつひとつが心に刺さって痛くても、「自分が悪いから」とひたすら我慢して耐えるしかない日々を送っていませんか。
しかし、あなたが「自分が悪い」と感じる部分が実際にあったとしても、上司や同僚から不快感を与えられ、心に痛みを覚える言動があれば、それは「超えてはいけない一線」を超えているのです。まず自分が「被害者」であることを自覚することから始めてはどうでしょう。

それと同じように逆の立場のパワハラ加害者は自分が「加害者」と自覚していないことがとても多いのです。
パワハラは、それを発する人間にとっては自分の中の「正しさ」が存在していて、「罪悪感を感じない構造」が出来上がっていることがほとんどです。もちろん最初から「悪意」に根差した確信犯も少なからずいるとは思いますが、何らかの「お墨付き」「大義名分」のようなものがあることによって、無自覚に人間はどこまでも残酷になれることは科学的に立証されています。
ハラスメントの加害者が、自分の大義や正しさを実行してしまうのは、その生育歴・家族歴に原因があると言われています。

→次回(その2)では、DV(ドメスティックバイオレンス)を取り上げて、ハラスメント加害者が100%「自分が正しい」と思ってしまう理由を考えていきます。
